006.株式会社ニッポンの仲間たちへ 2/4
だって、俺は俺じゃん
― かなり慰留されたのでは?
反対されましたよ。 本当に信頼しているかなり上級の上司に打ち明けたんですが、 「なんで辞めるんだ、ダメだ」 「いえ、もう決めたことですから」 なんて、酒の席でもう押し問答です。
そこで条件を出されたんです。 「そんなに言うなら、あと2年で会社にどれだけのことができるか。 お前のやろうとしていることは本当に社会で通用するのか試せ」と。 有難いことですよね。それで、2年かけて、計画的にやって退職したわけです。
― 同僚や部下、ご家族の反応はいかがでしたか?
家族には半年前に言いましたが。特にオブジェクションなしです。 うちはみんな、のんびりしていますから(笑) 社内の人たちにはギリギリまで黙っていましたが、「なんか、そんな気はしていました」 と言う声が多かったですかね。
― 会社を去る時、寂しくありませんでしたか?
言ってみれば、就業25年、店じまい2年がかり。 2年間かけて辞めるシュミレーションしていたんです。
― 辞めるシュミレーション?
そう。
例えば、新入社員としての初出勤の日のことを思い出してみたり、
入社した年の暑い夏を思い返してみる。
「サラリーマンとしての夏はこれが最後だ」なんてね。
最後に出社する日を想定して 「サラリーマンとして新橋に降り立つのはこれが最後なんだ」と考えてみたりして 少しずつ別れを告げてそれぞれに扉を閉じていったので、 さほどいろいろと思いませんでした。
サラリーマン生活もカウントダウンに入った頃、 すでに会社を辞めた先輩に誘われて飲みに行ったんです。 みんな起業したりして、活躍している人ばかりなんだけど、 「俺たちもうサラリーマンじゃないんだ」とか口々に言うもんだから、 こんなに素晴らしい先輩でもそう思うんだなとちょっと驚きでした。 虚無感、虚脱感、不安感・・・ 先輩たちも感じたこの感覚にきっと俺も囚われるんだ・・・と思って ちょっとわくわくしていたんです。
― わくわく?期待していた?
そう。でもね、何もこなかったんです。何も。
― ・・・・
淡々と過ぎちゃったんです。 お決まりで、女子社員から花束もらったりして、静か~に出てきた。 いい意味で、なんの盛り上がりもなかった。
「だって俺は俺じゃん」って感じですよ。 サラリーマンの俺も俺だし、会社を辞めてもそれは変わらないなと。