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011.描くことを選び続ける 1/3

田中明子氏 011.描くことを選び続ける

田中明子氏 011.描くことを選び続ける
※2010年2月26日(金)西麻布 art gallery closetにて

Profile
田中明子(たなか・あきこ)
日本画家
東京都生まれ
武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
1999-2000年「武蔵野美術大学パリ賞」を受賞、基金により1年間渡仏
HP:TANAKA Akiko's website

現在、個展開催中『Akiko TANAKA Exhibition』2/26(金)~3/9(火)
http://www.gallery-closet.jp/ art gallery closet
東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル3F
TEL 03-5469-0355

描くことを選び続けた結果=仕事

― 仕事としての"画家"を意識したのはいつ頃?

子どもの頃から絵を描くのが好きで、絵画教室にも通っていました。 何歳頃というより、年を経るにつれて絵を続けることが難しくなって、 絵を描くことを止めたくない想いが段々強くなっていって、 「止めない」という選択肢をとったから、仕事になったという感じです。

実は私はこの世界を避けていたところがありました。 個人が立っていて、ルールがない。ある意味、ヤバい世界です。 「私、画家です」って言えばなれちゃうわけですし。

日本画家 田中明子氏

高校の時、山中湖にスケッチ旅行に行ったことがあって、 そこで"画家"に出会って、私から声をかけて、少し話しました。 後で「絵描きさんに会っちゃった~」って友達に話したら、 「ダメだよ、そんな怪しい大人の言うこと真に受けたら」って 言われちゃいました(笑) その時は「ホントだよな~怪しい大人だよな~」と思っていたのに・・・

― なのに、なっちゃった?

(笑)

― その怪しい大人になって、今、この仕事が好きですか?

ん~好きかどうかはわからないですけど、存分に絵が描けて嬉しい気持ちがあります。

日本画家 田中明子氏と当コーナーのインタビュアー

仕事にしてしまうと、やっぱり止めることが難しくなる。
夜遅くなっても、体力的にきつくても、作品を作り続けなければいけません。 今、描く仕事をしているのは描くことを選択し続けた『結果』なんです。

それに、良い作品を作りたいという気持ちがあった。 良い作品に出会う度に「すごい格好いい! 私もこういう作品を描きたい」とずっと思っていました。

― 初めて作品を発表した時の気持ちは?

舞い上がってはいましたけど、 「デビューしちゃった」みたいなものはなくて、美大を出て、そうするものだと 思っていました。今にして思えば、絞り切れていない、グチャグチャな作品でしたけど。

― 描きたいもの=売れるものとは限りませんが、そのバランスはどう取っている?

日本画家 田中明子氏

バランスは取れていないかもしれません。
この1年は画業に専念していますが、その結果、わかったことは、 人に合わせていても売れない、ということです。 自分のやりたいことを優先させて、その楽しさが伝わった時に反応がある、ということですね。

― 『共感』ということですね。一つの作品に懸ける時間はどれくらい?

2か月くらいはかかっていると思います。

― 今の作風や方向性が固まったのはいつ頃?

日本画家 田中明子氏

渡仏して1年間、パリで生活しました。
アーティストたちと共同で生活していたんですが、今までの作風では彼らに伝えることが できないと感じたことがありました。 実際、私の作品ではありませんが、日本の某有名作家の展覧会が当時開催されていて、 その作品を見た仲間から「わからない」と言われたことがありました。

国内での評価が高い作家であっても、 日本の風景とか魚とか、それこそ、作品の中にあるファンタジーを見たとしても "同じ文脈上に居ない人"にはわからないんだと感じました。

これは絶対にやり方を変えないとダメだと思って、 現在のような抽象化の傾向に向かったというのはありますね。

例えば、日本語の文字のテキストを使った作品は、 最初にアメリカで試作していた時に反応がよかったんです。文字があると「読もう」と 思うのが、読める人の動き。それでは美しさまで感じられない。 でも、造形的な美しさがあるから、このスタイルが残っているんですから、 美術家として切り込めるのはこの部分だと感じて作りました。 実際、言葉が通じない中で「キレイだ」という評価もいただきました。

art gallery closet

今は新しいテーマが生まれた時が作風が変わる時。 時代性、世界で起こる事件、自分の中のタイミングが合わさると 何かテーマが生まれるという感じじゃないかなと思います。

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