010.共に汗を流し、まっすぐ、体当たりする経営者 6/6
御天道(おてんと)さんに恥ずかしくない生き方をしろよ
一番大事なのは自分の中のプライドです。
子どもたちにも社員にもいつも「御天道さんに恥ずかしくない生き方をしろ、
それが自分の中の法律だ」と言って聞かせています。
想いを込めて毎日コツコツやっていくとこんなに変わるんだということは
いっぱいあります。仕事も同じです。今の人ってすぐに成果とか、結果を見たがるんです。
わからないんですよ、そんなに簡単に成果が出ないことを。
例えば、入社数ヶ月で「自分がこの仕事に向いているかどうかわからない」という相談を
してくる子がいますが、「そんな短い時間でわかるか、バカヤロー」ですよ。
うちの若手には、3年は死ぬ気で武者修行をやるくらいの気持ちじゃないと、
勤まらないよと言います。
早いうちに判断したがるのは、私からすると逃げでしかない。
そんなに簡単にわかるはずがない。自分じゃなくて、周りが見て認めるものだと諭します。
すぐ結果を求める―
自分のポジションがない―
よく聞きますが、そんなものあるはずがない。まだ半人前なんだから、あったらおかしい。 すぐに活躍の場を与える会社もありますけど、『石の上にも3年』とはよく言ったもの。 私の中では3年間は下積みの時間です。
このドリームツリーにもありますけど、大切なのは根っこ。 下に深く長く根っこを生やさないと、つまり、基礎ができないと応用はできません。 なんで基礎もないのに応用したがるのか、不思議でなりません。
― PC、ケータイとなんでもすぐに答えが見える時代ならではの悩みですね。 「知っている」と「わかる」の違い然り。 みんながわかっているつもりのものは実は表面上をさらっと知っているだけということは ありますしね。
そうです。『守・破・離』※という言葉が今の子たちにはわからないですからね。
ここ(=オフィス内)のスペースで時々、スタッフに守・破・離を交えて
研修をすることもあります。
※茶道や書道などの芸事や武芸などを嗜む人に、「道」を究める心得を教えたもの。
【『守』=師の教えを守り、型を体得する、
『破』=型を破り、自分の型を模索する、
『離』=型から離れ、自分なりの型を編み出し、操る】
提唱者として、世阿弥、千利休など諸説がある
― 経営トップから直々に学べるのは素晴らしいですね。どんなことをやっているんですか?
一番には本人たちの「生き方」の話です。人として生まれてきて、どう生きるか。
どうやって人と関わっていくか。そして次に、お客様に来ていただくこと、
いかに楽しい時間を過ごしていただくか、おもてなしを中心に教えています。
私自身もかなり時間をかけて、飲食関係も含めた勉強会やセミナーで
大分ブラッシュアップしたので、そこで教えていただいたものに自分の経験で
アレンジして落とします。習いに行くと教えたくなるんですよ。
ただ、あんまりやりすぎると当たり前になるので外部講師を招くこともあります。 「研修受けてよかったな」ではダメ。 それをいかに自分の中に取り入れてアウトプットしていくかが大切です。
―日常の細々した業務が多いから、その時は目からウロコでも それをいかに行動に落とし込むかが難しいところですね。
集客の必須条件は『前回越え』、全員が経営者感覚を持て!
お客様を呼び込むには"前回越え"。つまり「おっ、この前よりもいいじゃないか」 と思っていただかないとお客様は続かない。 確かに不況ですけど、お客様が減ったことを不況のせいにばかりしていたら 伸びませんよ。 いつも社員には言いますが、会社は自己実現の場。 うちを辞めたとしても、どこに行っても最低限通用することを身につけてもらいたいと思っています。
― 玉海力は育つ場、河邉社長は育てる経営者ですね。
自然とそうなってきていますね。 最近は変わってきましたけど、飲食業に関わる人というのは 単に"料理が好き"という人が多い。それしかできない、というか、 つぶしのきかない人が多いように思います。 どこに行っても通用する人間になってもらうには、全員が経営者になる感覚で 仕事をすることだと思います。 勤め上げるにせよ、独立するにせよ、よそで働くにせよ、どんな環境にも 対応できるように育って欲しいと思っています。 そのために育成をやらなければいけない、という使命感を持っています。
実際、独立フランチャイズ化システムがありますから、それを目指す者も少なくない。 独立は勝負です。借金を背負って、店をやって、潰れたら残るのは借金だけ。 経験は得られますが、失敗する者を出したくないんです。 そう考えるとやっぱり大事なのは教育です。
みんな、店は簡単に出します。 小さいなら簡単。親が保証人になればすぐですよ。 そんな簡単なものじゃないんだよ、ということを教えたい。 私は最初の頃は朝、築地の仕入れから仕込み、料理も全部やりました。 今、入ってきた社員は私がそれをやっていたのを話には聞いていても見たことがない。
そうすると「社長っていいね」となるわけですよ、知らないから。
夜は現場に居ないし、チョロチョロっと店を見て、 どこかその辺で酒でも飲んでいるんだろうと思っているかもしれません。 でも、そうなっているうちはいい組織はできない。 私が発信して先に立って教えていくことが必要だと思います。
― 教育事業も視野に?
最終的にはやはり、教育関係の仕事をしたいと思っています。 そういう想いもあってビーチ相撲をやらせてもらっています。 採算を度外視できるなら、学校教育も頭にあります。
― 次回は玉海力のちゃんこをぜひ、いただきに上がります。 今日はお時間、有難うございました。
インタビュアー後記
「どこへ行っても通用する人間になれ」=「俺は見ているぞ」
「御天道さんに恥ずかしくない生き方をしろよ」=「世間は見ているぞ」
河邉幸夫はあまりお目にかかれなくなったタイプだと思う。
嬉しくなった。
基本は『ニッポンのオヤジ』。しかし、反面、頭はクールで発想の宝庫。
発信することに長け、事業を発進させ、社員を、組織を常に発振する、
"ハッシンの達人"である。
ハッシンとは見せることであり、魅せること。
強くなりたいと願い猛稽古に耐え、土俵でファンを沸かせた時代も
経営道に邁進し、社員を育てる今も河邉幸夫は常に体当たりである。
独立や起業を目指す人の手本になっていって欲しいと心から思う。
本記事に使用している写真の一部は、河邉幸夫氏から許可をいただき株式会社玉海力HPよりお借りしております。
Information
■『力士味噌』をはじめオリジナル商品が買える
玉海力オンラインショップhttp://tamakairiki.shop21.makeshop.jp/
販売中の力士味噌は1瓶が売り上るごとにその一部を発売当初から
『save the children』http://www.savechildren.or.jp/に寄付。
以前から個人でユニセフやワールドビジョンなどを通じて
チャイルドスポンサーを務めてこられた河邉社長の発案によるもの。
法人として、「お客様から見てわかりやすい」「社員のモチベーションを高める」
ことも兼ねた社会貢献の一環。
実績2008年9月:29,567円/2009年9月:50,539円
「2010年はかなり増える見込み」(河邉社長談)
このコーナーについて
あなたは子どもに自分のことを話せますか?
どんな仕事をし、どんな人生を歩み、
どんな夢を描いているか、話すことができますか?
人の想いや夢を知り、 厳しい体験や素晴らしい経験に触れ、 驚いたり、感激したりすると、心は自然と柔らかくなります。
本にも雑誌にも載っていない、テレビでも見られない。
ドリキャリはオリジナル・ストーリーを発信するメディアです。
共感したら、今度はあなたが子どもに語りかける番です。
本物の大人が背中を見せるチャンスをドリキャリからあなたへ。