多文化共生センターでの出前授業
11月17日(木)、東京都荒川区の多文化共生センター東京「たぶんかフリースクール」で出前授業を行いました。多文化共生センター東京とは、親御さんの仕事の都合などで日本に暮らす外国にルーツをもつ子どもたちに学習機会と居場所を提供し、日本社会でその能力を十分に発揮できるよう、教育支援を行っているNPOです。
このNPOでは、日本語や教科を学び高校受験を目指す「たぶんかフリースクール」を運営しており、フリースクールのキャリア教育の一環として、ドリームツリー出前授業の依頼をいただきました。
新たに移り住んだ先の国の文化や言葉に馴染むのは、とても難しいことです。
また、子どもたちは、日本と母国との学校制度などの違いから、進路についての十分な情報を得ることが困難な環境に置かれています。
自分を見つめる授業を通して、何か好きなこと、興味があること、日本で一歩踏み出すきっかけとして、今回ドリームツリー出前授業を行いました。
生徒さんの人数が多かったことと、出身地域が多岐に渡るため、
今回は中国語圏クラスと英語圏クラスの2クラスに分かれて授業を実施しました。
中国語圏クラス
楚先生は、子供たちと同じ中国出身。最初の自己紹介を日本語で行ったところ、クラス内に少し戸惑う雰囲気を感じたため、
授業はほぼ中国語で実施することとなりました。
同じ国からそれぞれの事情で日本へ来た者同士ということで、
「日本に来て驚いたこと」というテーマの話で非常に盛り上がりました。
例えば
「日本に来て初めて雪を見た」(中国南部では雪が降りません。)
「日本の女の子が冬でも生足でスカートを履いている。」
など、我々にとって見慣れた光景も
彼らにとっては驚くべき光景だったりするようです。
母語によるインストラクションと、同じような驚きや苦労を共有できたことで、
子供達は積極的にドリームツリー授業に参加してくれるようになりました。
勉強が好きだから勉強をもっと頑張り学びを得たい、という生徒。
イラストを描くのが好きだからと、たくさんのイラストを交えながら
イラストレーターという夢をドリームツリーシートに描いていた生徒。
素晴らしい思いや優れた能力を持った子供が多いクラスでしたが、
時には言葉の壁が問題となり、それを発揮できずにいることもあるように感じました。
しかし、ドリームツリーを描いて、夢や好きなことが明確になったことで、
自分が今何をすべきなのか、将来と向き合うことができたようです。
【英語圏クラス】
(株)NLPインスティチュートの堀口紫さんにご協力いただきました。⇒http://www.nlpij.co.jp
まずは、堀口先生のお話から始まりました。
自身の生い立ちから今に至るまでの話をして、その中で得た経験を
ときにユーモアも交えながら真剣に話してくださいました。
堀口先生の世界中で育ったからこそ得られた経験は
多くの人が欲しいと思っても簡単には手に入れられない貴重なものであり、
それを活かすことで、自分の未来の可能性が何倍にも何十倍にも拡がるのだということを
生徒達に熱く語りました。
また、自分の国の言葉や文化を再認識し、それを大切にした上で
他の国の言葉や文化を理解している人こそが国際人として
これからの社会に必要とされる人間なので、
日本にいても母国人としてアイデンティティを持つことも重要だという話もありました。
流暢な英語を交えながら経験談として話をしてくださったこともあり、
授業が始まる前は「これから何が始まるのだろう?」と
いぶかしげな顔をしていた生徒たちも、
徐々に引き込まれ、最後にはのめり込むように
話を聞いてくれていました。
そして、いよいよドリームツリーの作成です。
好きなことを書くところで、最初なかなか筆が進まないのは日本の子供たちと同様で、
授業を実施する前に一度打ち合わせも兼ねて見学にお邪魔したときの
子供たちの様子や、休み時間にした会話を思い出して
我々からも助言をすることで、少しずつ書き進めてもらいました。
ただ、自分の得意なことや長所となると、
日本人の子供たちへの授業とは、様子が少し違いました。
日本の子供たちにとっては、
得意なことや長所というのは、
好きなこと以上に書き辛い項目のようですが、
多文化共生センターの生徒たちは、
自分の得意や長所をしっかり自覚し、開示することができました。
そうなると夢を見つけるのも早いもので、
これから日本語の勉強を頑張って通訳になりたい、
母国と日本との架け橋となる仕事がしたい、
絵を描くのが好きなので、更に腕を磨いてイラストレーターになりたい...
次々と素晴らしい夢が出てきました。
発表
最後は、中国語、英語の2クラスに分かれていた生徒達全員が同じ教室に集まり、出来上がったドリームツリーを手に、みんなの前に出て夢を発表してもらいました。
発表は母国語と日本語で行い、各自の母語で夢を語る子供達の姿は
ときに恥ずかしがり、ときに熱く、言葉は違えども日本の子供達と同じ。
彼らの表情は、とてもいきいきしています。
その発表をご覧になっていた先生たちの表情も印象的でした。
自ら挙手し、みんなの前に出て、一生懸命に自分の夢を語る生徒たち。
先生たちは、心配そうに見つめておられます。
しかし、堂々と自分の将来について語る生徒たちを目の当たりにされた先生たちの表情が
笑顔に変わります。日頃は、なかなか見られない彼らの姿に先生たちも感動された様子が
こちらの方にも伝わってきます。
生徒の皆さんの発表後は、大きな大きな拍手が鳴り止むことはありませんでした。
先生と生徒たちの絆がより強く実感された瞬間でした。
いろいろな環境で学ぶ生徒たちがたくさんいます。
彼らは決してひとりではない。
共に学ぶ仲間、見守り支える人たちがいる。
そんな絆が感じられるドリームツリーの授業でした。