014.イメージせよ!チャレンジせよ! 3/3
― スキル面はどう伸ばす?
技術は子どもが自然に習得していくものです。こちらが与えるのは方向性やきっかけだけ。
あとは子ども自身が考えて、オリジナルで技術を生み出して欲しい。
小手先の技術より人間としての心の幅を広げてあげたい。
単純に鬼ごっこでもいいんです。
気づいたら早く走れるような状況になっていた。それで、いいじゃないですか。
技術を教えるというより、チャレンジする気持ちを教えたいと常に思っています。
― 指導した子どもの数は?
考えられないくらいの数ですね・・・(笑)
去年1年間で1万人以上でしょうか。
ひとつの会場で幼稚園児1000人くらいに関わらなければいけない時もあります。
大変に見えるかもしれませんが、そんなに沢山の人にフットサルを伝えるチャンスだと思うと発奮しています。
一人でも多くの人に、ボールを蹴る楽しさを知ってもらいたいですから。
― 反抗的な子どもにはどう接する?
ぶっ飛ばします!冗談です(笑)
態度や仕草に寂しい気持ちが表れていたりするので、そういうところに目を配ります。
そして、指導した通りにやらない時は捕まえて、一対一でしっかり話しますね。
毎回関われるなら、方法もありますが、全国各地を回っていると、
スクールでもない限り、子どもとの関わりはその一度きりです。
だから、伝えるのは気持ち・想いです。僕には、ボールを蹴る、運動をすることで
一緒になれる力があります。スポーツ選手として、一人の人間として注意します。
それが、スポーツやアスリートの魅力だと思います。
嬉しいことに、少しずつですが、「毎年来てください」と言ってくれるところも増えてきていて、
4~5年の付き合いになっている子どもたちもいます。
― 長い付き合いの子どものエピソードを紹介してください
今、小学校3年生の岡山の女の子なんですが、その子が幼稚園児の頃に教えたことがあって、 フットサルの全国リーグ『Fリーグ』の会場で、 「相根さんに教えてもらって、フットサルを好きになってずっとやっているんですよ」と、 声を掛けられました。すごく幸せな気分になりましたね。
一番変化があったのは、小学校1年生の時から見ている子なんですが、
チーム内でも上手くないほうから数えた方が速いくらいだったのが、
2年経った今は、チームの中で中心選手になって活躍しています。
行った指導はシンプルで、自分のところにボールがあると、取られるのが嫌だから、
そのまま他へ蹴ってしまうので、
ボールが来たら、取られてもいいからまず止める。取られてもいいから、
まず止めさせる、の繰り返しを指導しました。
最初は失敗してばかりでしたが、ある日、いきなり相手をかわすことが出来るようになりました。
これがきっかけで自信がついて、今では中心になっています。
失敗を積み重ねて、知恵をつけたんでしょうね。
やらざるを得ない状況にさせるという指導が奏功しました。
これは僕の経験ですが、例えば、自分がボールを持っていて、
ディフェンスに一対二、一対三で囲まれたら、『取られて当たり前』と考えますよね。
では、ディフェンスはどんな心理状態かというと、一人じゃないから
一対一でボールを取りに行く時よりも明らかに安心しているんです。
だから、ふと抜けることのできる瞬間がある。
その「できる」「できた」という経験から自信をつけさせたいですし、
そこで指導者は「この子はタテに抜けるのが得意だな」と判る。
だから、「タテに抜けてみたら?」とヒントを与える。
ボールを止める、取られることから始まって、失敗や成功の積み重ねがあって中心選手に育っていくんです。
子どもの可能性に対して、大人の責任は重大です。
― 子どもの能力のどんなところに特に注目しますか?
『何を加えたら上手になるか』を見極めます。 そして、動きのぎこちないところを探します。
上手い子は黙っていてもやる。誰を相手にしても自分の得意なものはやるんです。
でも、得意なものほど、レベルが上がると頭打ちになる。
上手い選手と当たって抜くことはできても、次に遭う上手い選手には取られるかもしれません。
僕は指導に行くと最初に「失敗を100回してください」と話すことにしています。
「失敗をしていい」という安心感を与えることから始めるんです。
これから、スクールを本格的に立ち上げて行きますが、そういう点も重視していきたいと思っています。
― スクールの立ち上げはいつ頃になりそうですか?
9月から本格スタートになります。
― 応援しています。スクールではぜひ、生徒にドリームツリーを描いてもらって、 両輪で指導していただきたいです。今日は有難うございました。
インタビュアー後記
「イメージしていた」「明確な青写真があった」「ボールを蹴ることが好きだからやめなかった」
相根氏は何度ともなくこう話した。
平凡な才が非凡に、比類なき才になるために欠かせないものとは
明確なイメージと「好き」から生まれる無限のパワーではないだろうか。
指導者として、新たな道を行く氏の下から、チャレンジし続ける子どもたちが
次々と巣立つことを願って止まない。