005.勝ちにこだわらず、プロセスを大切にする 1/2
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Profile
黄川田 賢司(きかわだ・けんじ)
プロサッカー選手
1974年 埼玉県出身 亜細亜大学卒業
1997年にJリーグコンサドーレ札幌入団、川崎フロンターレを経て
2003年現役引退(株)クラッキにおいて、サッカーコーチを務めるとともに、(財)日本サッカー協会こころのプロジェクト夢先生、
ドリームツリープロジェクトでゲスト・ティーチャーも務める
2009年5月、北海道・道央リーグ、小樽FCで現役復帰
34歳
所属 株式会社クラッキ HP:http://www.craque.jp
Blog:クラッキ [escola de craque] Blog
サッカーを通じて北海道を元気にしたい
― 今年5月に北海道の社会人リーグ・小樽FCで現役復帰を果たしたということですが、 きっかけを教えてください。
北海道は私がプロサッカー選手としての第一歩を踏み出した地です。ご存知の通り、 地方は不況の煽りをまともにくらっているところが多く、 北海道も小樽も例外ではありません。
「サッカーを通じて北海道を元気にしたい」
北海道のJリーグクラブ、コンサドーレ札幌にクラッキ代表の野々村をはじめ、私たちクラッキのメンバー6人が所属していたこともあり、みんながこの気持ちをもっていました。
そんな時、知人を通じて選手が揃わず活動休止の危機にある「小樽FC」のことを
耳にしました。
「それなら、俺たちが今できることをやりたい」
この気持ちをクラッキのメンバーに伝えて、結局、私を含め6人の元コンサドーレ札幌のメンバーが賛同してくれて、現役復帰しました。
実は、引退してからしばらくは後悔の連続で、
Jリーグ中継をテレビでやっていても、その舞台がもう眩しくて、眩しくて。
しばらくはまともにサッカー観られませんでした。
試合会場に足を運んでも、「俺、なんで、ここで見ているんだろう」と自分に違和感を
覚えました。
ピッチはスポットライトが当たっていて、異様に明るく見えました。
しかも、試合に出ているのは自分が一緒にプレーした仲間ばかりですから、
「あそこに自分がいたのに・・・」と。
そういう思いを経験して、何事も真剣にプライドを持って臨むことが大切だと
改めて強く感じ、ピッチに立っています。
現在、東京在住で、試合が行なわれるのは北海道ですから移動などが大変ですが、
有難いことに、根強く応援してくれるファンや地元企業の支えもあって
本当に心強いですし、みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。
― "プロ選手という仕事"を客観的に見ることができたと思いますが、復帰してみて改めて気づいたこと、感じたことを教えてください。
やはり、現役時代とはレベルが違います。
かつて何千、何万人が観戦する中でプレーしていましたが、
そして、観に来てくれた人に感動や興奮、時に夢や元気をもたらすことが
"プロ選手という仕事"のでもあると考えていました。
今はシンプルに、私たちが北海道で楽しんで、元気にプレーしている姿を
見せることで、元気になれる、笑顔があふれる人を増やす。
これが最大の役割だと感じています。
残念なことに、社会人リーグに参戦してみてわかったのが、
非紳士的な言動がずいぶん多いということです。プレーの質にも同じことが言えます。
サッカーは一人では出来ないスポーツですから、
チームメイトだけでなく、対戦相手、審判、観に来てくれた人など、
「サッカーを一緒に楽しむ仲間」として考えて欲しいですね。
今のステージ、大切にしたいのは試合結果というより、試合をする目的であり、そのプロセスです。
勝負ですから、勝つためにやるのは大前提で、
誰でもはじめから負けるために戦うわけではありません。
どんなレベルの試合でも勝利を目指すのは当然のことですが、
結果以上に、試合をすることで得られるものに価値を見出しています。
チームメイトにも対戦相手にもアマチュアがいますから、大勢の観客やマスコミが見守る中で
試合に出る元Jリーガーと対戦するということが経験にもなると思いますし、リアルにプロの動きを肌で感じてくれると、社会人リーグ全体のレベルアップにも繋がると思います。
実際そういう嬉しい声もいただきます。
草の根レベルの活動らしく、やるからには相手にとっても、自分たちにとっても、試合をする以上の何か新しいものをもたらしたいと思っています。
サッカーを楽しむ人たちの輪が広がってくれると、わたしたちの活動も
真に価値のあるものになるでしょう。